「サイトオリエンテッドin滋賀会館 vol.2」
耳より情報 2008年01月25日(金)17:03
■はじめに
滋賀会館は、昭和29年(1954年)滋賀県の文化発祥の場として開館しました。当時は、大ホールなどの文化施設の他に、図書館、結婚式場、ホテルとしての機能を持ち多くの人々に親しまれてきました。現在はこのような機能はなくなりましたが、大ホール、中ホール(シネマホール)、文化サロン、集会室、テナントハウス、郵便局、地下名店街など複合的な施設として存在しています。(※)これらは、それぞれの場所の発する質感、記憶やにおいがとても強く、特徴的な性質のあるスペースで構成される魅力的な空間です。サイトオリエンテッドin滋賀会館では、滋賀会館とアーティストが関わり、向き合いながらイベントを開始します。その中で、滋賀会館とアーティストの魅力を引きあわせ、紹介していくことを目的としています。
vol.2となる今回の企画は、滋賀会館全体を使用したインスタレーション作品展示、作家によるワークショップ、企画をより深く知ってもらうフリーペーパーの発行までを視野に入れた展覧会を予定しています。
※滋賀県では、平成17年2月に策定した「公の施設の見直しについて」の方針を踏まえて、滋賀会館のあり方について廃止も含め検討していたが、2007年10月3日に開催された県議会の生活文化・土木交通常任委員会において、「滋賀会館は平成21年度末をもって文化施設としては用途廃止する」という検討結果を報告した。また、施設・設備の老朽化および維持管理経費の増大等を理由に、文化施設としての用途廃止に先行して、平成20年9月末をもって大ホールの供用を廃止するとの方針を併せて示した。
■企画概要
サイトオリエンテッドin滋賀会館 vol.2
福田真知 展(キュレーション:永尾美久)Masakazu Fukuta Exhibition(curation by Miku Nagao)
『out I in line』
とき:2008年2月5日(火)─2月11日(月・祝)
時間:12時─17時(※一部の作品は開館中いつでもご覧いただけます)
場所:滋賀会館(2階・3階・4階)※受付は3階ロビー前
料金:無料
・関連企画「filmワークショップ」
自分の子どもの頃の写真をトレース(書き写す)ことで、「思い出せない記憶」を思い出そうとする作品『film』。今回は、この『film』を実際につくる体験をおこないます。様々な出来事や物語をもった滋賀会館、そしてそれと平行してある個人の記憶や思い出。その関係や、作品制作の意図などを感じてください。
とき:2月9日(土)、10日(日)(15時〜16時)
場所:滋賀会館4階特別集会室B/定員7名/予約優先
・同時開催
会期中、開館当時から現在に至るまでの写真や模型など、滋賀会館に関する資料を展示します。あわせてご覧ください。
場所:滋賀会館1階第一集会室
─滋賀会館─
〒520-0044大津市京町三丁目4-22
TEL: 077(522)6191/FAX: 077(524)6300/E-mail:shigakaikan@shiga-bunshin.or.jp
京都駅からJR琵琶湖線で9分
JR大津駅から徒歩5分 京阪島ノ関駅より徒歩3分滋賀県庁正門前
主催:cashmere
協力:財団法人滋賀県文化振興事業団【滋賀会館】、RCS
協賛:成安造形大学同窓会
県民文化活動チャレンジ企画補助金助成事業
問い合わせ:cashmereigummo_006@clock.ocn.ne.jp)
■展覧会コンセプト
視覚として何も見えないもの、意味がないようなもの、「モノ」としての作品ではなく、そこまでにいたる過程や、要素が重なることで変化する作品をつくる福田真知。そこには、時間や記憶の中で人々が存在している跡を残す作業にすぎない。それは、生きている限り、繰りかえされ、終わりのなくつづく「ナマモノ」のようなものである。その作品の説明は、まさしく「滋賀会館」を人に説明する感覚とよく似ている。私は、滋賀会館シネマホールにスタッフとして長い間関わってきたからというのが理由になるかもしれないが、「滋賀会館」という場が、文化施設のハードやソフトというそもそもの目的の意味ではなく、場にある情景や空気感、匂い、音、その場にいる人々の記憶、懐かしさや居心地の良さという感情の意味で、「何かがあるという気配」を体で感じているのである。それは、まさしく「ナマモノ」であり、どこか幸福で、生活の中で、一つの心の拠り所でもある気もするのだ。
今回、このような感覚を、展覧会という出来事の中に置くことによって、浮き彫りに出来るのではないかと思っている。
2つの「イキモノ」を浮き彫りにする方法の一つに、「アウトライン」というキーワードを提示したい。滋賀会館がもつ魅力の一つに、建物の構造があげられる。建設当初から複合的な施設目的をもっていたことや、何度かの改装や増設が繰り返されたこともあり、建物は迷路のように入り組んでいる。それを目で確認できるのは、やはり、図面で見たときの、外枠のアウトラインである。決まったアウトラインの中に目に見えない思い出や記憶、物語がある。それが、アウトラインの反対の意でインラインと言えるかどうかは断定できないが、もし仮に断定してみると、そのいままで見えなかった「何かがあるという気配」が、アウトラインを引くことによって見えるような気がする。その滋賀会館のアウトラインと、インラインの関係を、福田真知の作品を通して考えてみると、彼はそのアウトラインを何層も重ねて見えないようする作品(『film』2004)や、自分の描きたい線を描く直前に裏切るといった作品(『I know』2005)家の外枠だけを、小さくしたスポンジで縁取るような作品を制作している(『glory house glory home』 2006)。それは、個人的な感情や思いや記憶をどうにかアウトラインをつける作業で内包しようとしているのだと感じるが、その内包されたものにどうしても浸れなかったり、断定したりできないから、アウトラインを裏切ったり、消したり、さらにアウトラインを引く作業をする。そうすることでまた、形を変え、曖昧になる。
まさにこれは、いままで見向きもされなった個人的なものであって、公の建物のアウトラインや、歴史や思いでとは別の、個人の生々しい姿が作品によってようやく目にみえ、提示される気がするのだ。(永尾美久)
■アーティスト略歴
福田真知(Masakazu Fukuta)
1983 岐阜県生まれ
2006 成安造形大学卒業
─個展
2006 『perhaps,This way』展(iギャラリー・岐阜)
2007 『near=far』展(iギャラリー・岐阜)
━グループ展
2005 すきま展(同時代ギャラリー・京都)
第9回成安造形大学造形美術科進級制作展(滋賀近代美術館ギャラリー)
2006.1 成安造形大学第10回卒業制作展(京都市美術館)
.2 湖族の郷アートプロジェクト(滋賀県大津市堅田地域)
.12 湖族の郷アートプロジェクト(滋賀県大津市堅田地域)
━受賞歴
2004 京展入選(京都市美術館)
■キュレーター略歴
永尾美久(Miku Nagao)
1983 滋賀県生まれ
2005 成安造形大学芸術計画クラス卒業
在学中、卒業後ともに文化事業の企画・運営に携わる。
主な活動に、滋賀会館シネマホールスタッフとしての活動、2007年京都芸術センター主催「コーディネータースプラウト」『継ぐこと伝えること35』企画・制作、2007年『踊りに行くぜ!』(栗東芸術文化会館さきら・滋賀)の印刷物デザイン、栗東芸術文化会館さきら「りっとーあーとをつくろう隊」への参加、2008年「映画『めがね』公開記念/珍しいキノコ舞踊団 伊藤千枝ダンスワークショップ」(滋賀会館)などがある。また、主な展覧会企画として、「キュレーターズ・アイ2007」松永紗耶加『抄録/話の散歩』展(ギャラリーマロニエ・京都)など。